ボールベアリングが故障した(回転が鈍った)ためメンテナンスをしてみました。
※今回ご紹介する方法は経験に基づいた方法ではありますが、100%の確率で状態が回復するわけではありません。
また、揮発性のあるオイルを使用 + 火を扱うため、記事を読み実戦された場合において生じた損害について一切の責任を負いかねます。
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目次
ベアリングとは
外側の円周と内側の円周の間に小さな金属製の玉が入っており、球体を介すことで接触面積を小さくし、わずかな力で大きな回転力を起こすことができる部品です。
工業部品が大好きな自分にとって造形だけでワクワクしてしまいますが、普段はあまり目にすることのないアイテムでもあります。
身近なところでも使われているベアリング
段ボールや重たい荷物を移動させる「ベルトコンベヤーのローラー部分」や、身近なところでは「ミニ四駆」や「釣り竿のリール」にも使用されており、「縁の下の力持ち」的なポジションで人知れず我々の生活を支えてくれています。
「ヨーヨー」の中にもベアリング
個人的な趣味のヨーヨーでは回転力を生み出す非常に重要な部分となるため、定期的なメンテナンスが欠かかせません。
高い物は2,000円を越える物も存在し、値段に正比例して回転率や精度が上がっていく傾向にあるようです。
↑ 長時間使用しないベアリングは「ミシンオイルを満たした小瓶」に入れて保管。
こうすることで「錆び」を未然に防止することができます。
当たりとハズレが存在する
今回ご紹介するベアリングは購入当初から「数秒しか回転しない」「若干ガリ音がする」状態のいわゆる「ハズレ」と呼ばれるもの。
(工業製品であり消耗品であるため、低い確率ではありますがありえる話です)
「Dif-E-Yo コンケイブベアリング」↑
日本でのお値段は驚きの「1,990円」(2015年当時)
購入当初は軽快に回ってくれていたのですが、数日で回転力が鈍化してしまい「ガリガリ」と異音が起こり始めました。
運が悪かった・・・(´・ω・) としばらく放置していましたが、値段が値段だけに諦めきれず捨てる覚悟で分解を含んだメンテナンスに挑戦してみました。
メンテナンス前の状態をチェック
まずはメンテナンス前の状態を確認していきます。
ベアリングの穴にピンセットを刺して固定。その後、親指で弾いてどのくらい回るのかを調べます。
強めに弾いても2〜3秒程で回転が止まってしまいました。
そして若干 “ガリガリ”と引っ掛かるような音もしています。
この状態からどこまで改善できるのやら・・・
メンテナンスを開始
それではメンテナンス作業に移ります。
用意するもの
用意する物は、ライター、ZIPPOオイル(パーツクリーナーでも可)、ピンセット、フタで完全密閉できる小瓶、“しなり”が少ない頑丈な針(写真はマチ針ですがその後いろいろ試してみて「ミシン針」が最適でした)。
ティッシュ等の柔らかいものの上にベアリングを置きます。
ベアリングシールドの外し方
写真の赤丸の部分で示した箇所に溝があるのを確認して、窪みに針の先を引っかけます。
するとこんな感じでシールドの留め具が外れます。
このパーツはバネの伸縮性を利用して固定されているため、無理に取り外そうとするとハンパ無い勢いで飛んでいってしまいます。
小さな部品なので飛んでいく方向によっては行方不明となり、回収不可能になりかねません。
よって、写真↑のように糸などを絡めて(今回はセロテープを縦半分に折った物を使用しました)紛失を防止することをお奨めします。
留め具を外して軽くトントンと振るとシールドが外れます。
左から「留め具」「シールド」「ベアリング本体」
同じ行程を裏側にも施すと中にある鉄球が露出しました。
(この状態で球が外部に転がり出すことはありません)
ちなみに強い衝撃を与えるとこんな感じでバラけます・・・(※写真は別のベアリング)
こうなると元に戻すことはできませんでした。
ベアリング内部の「脱脂作業」
中に入り込んだ細かいゴミや油脂をZIPPOライターに使用する「ZIPPOオイル」で洗浄します。
小瓶のフタを開けてベアリングが浸される程度にZIPPOオイルを注ぎます。
瓶の半分〜8割ほどに液体を満たせば充分な洗浄が可能。
しっかりとフタをして、1分ほど放置。
その後、ガス抜きのために軽くフタを開けて中の気体を逃がしてから再度締めます。
そしてこのままの状態でで5〜10分放置。
~ 10分後 ~
軽く瓶を握って小刻みに1分ほど振ります。
※荒く振るとスッポ抜けたり瓶が割れたりする可能性もあるので軽く振ってください。
ベアリングは小さくても金属部品なので、あまり勢いよく振ると突然割れます。
※写真は別の機会のもの
ベアリングの乾燥方法
【その1】自然乾燥
慎重に瓶の蓋を開けてピンセットで取り出して、
オイルを軽く拭き取ってティッシュの上に置き、液を揮発させるため5分〜20分ほど放置します。
【その2】エアダスターを使用
揮発させる時間を短縮させる手段として「エアーダスター」を使って吹き飛ばす方法もあります。
ベアリングの下にティッシュを何枚か重ねて敷き、内部めがけてエアーダスターを吹きかけていきます。
飛ばされたオイルがティッシュに染み込んでゆく様子と、もの凄い勢いで回転するベアリングは一見の価値アリ。
【その3】ライターで炙る
※ここからの行程は発燃性のある液体に火を点けるものです。この手順自体が性能改善へどれくらい貢献しているのか不明な上、ベアリング内部の球がセラミック製の場合、着火することで球状がいびつに変形する恐れもあるため、内部の素材が不明な場合はこれからの行程を省略することをお奨めします。
自然に揮発させてもベアリングの内部にオイルが残っているのでライターで炙ります。
ススがついてしまっては元も子もないのでサッと軽く炙る程度。
ごくたまにベアリングに引火してしまう場合もありますが、軽く振れば簡単に消えるので 焦らず続けます。
この作業を長時間行うと、加熱されたベアリングは非常に高温となるため注意してください。
皿などの上に放置して自然に冷却されるのを待ちます。
ベアリングシールドの取り付け方
分解したときと逆の手順を行い、シールドを付けて留め具で固定。
仕上げにエアスプレーでシールドをまんべんなく吹いて、ホコリの付着を防止します。
脱脂後の回転チェック
脱脂前は2秒ほどの回転が 4〜5秒 まで復活。
時間こそ延びましたが「期待していたより延びなかったな・・・」といった感想です。
予想では「10秒越えくらいは行けるかな?」と思ってました。
この段階のベアリングは「ドライベアリング」と呼ばれます。
通常のベアリングは内部の金属同士の干渉を緩和する(金属摩耗を防ぐ)ための “ 油 ”が注入されています。
表面が保護されているので長い間使用できるメリットがありますが、純粋な回転力が犠牲となっていました。
今回のようにZIPPOオイルで洗浄を行い、内部の油を強制的に除去することで、寿命(使用時間)と引き替えに爆発的に回るベアリングとなります。
奇跡の薬品「レボリューションBB」
今回は “故障したベアリング” を使用していたので、ドライベアリングの状態にしても完全な復活は厳しかったようです。
このままではネタ的に空しいままなので、最後の手段【レボリューションBB】を投入。
ベアリング内部に1滴垂らして内部の鉄球をまんべんなく転がすことで薄い皮膜を生成。
球をコーティングすることで、回転時の摩擦抵抗を限りなく無くすことができる薬品です。
レボリューションBBの使い方
なるべく「薄い」皮膜を作ることが重要となります。
1.慎重に1滴だけ垂らす(多すぎると逆効果)
※シールドを開けた状態だと更に良い効果を得られます
2.ピンセットにベアリングを差し「時計回り/半時計回りに軽く1〜2周」回す。
3.エアダスターで余計な液を吹き飛ばし、親指で数分弾く。
ピンセットで固定して軽く回し続けます。
2〜10分程回しているとガラガラ〜ッと音が変わってくるのでそのまま数分回続けてあきらかに回転時間が長くなった時点で完成。
さっそく回転させて実験してみます。
あきらかに ・・・というかありえない程に回転時間が延びました!
2〜3秒 → 16秒 /(^o^)\
「最初のベアリングと差し替えてるでしょ?」
と、ツッコまれても仕方ないレベルの豹変ぶり。
ガリガリと引っ掛かるような音は改善できませんでしたがここまで復活できれば御の字です。
最後にミシンオイル(サラサラで粘度が極めて低いオイル)を1/3滴ほど垂らして完了。
内部保護のためにオイルを刺しても回転時間は数秒ほど低下するだけなので許容の範囲内です。
まとめ
「延びてもせいぜい5〜6秒でしょ?」と軽い気持ちで行った作業でしたが、捨てる一歩手前の物が普通に使えるレベルまで復活したのは驚きでした。
とはいえ、【レボリューションBB】がなければ想定内の結果で終わっていたワケですが・・・
(´・ω・)
実際にやってみて思ったのは「魔法かよ!」とのひとこと。
いったいどんな成分が入ってるんでしょうか?
ついでにベアリングの「ガリ音」がなんとかならないか実験してみました↓↓
いずれの方法も「壊れて捨てる前に一度試してみては?」レベルのTipsなので、脱脂の行程までは期待ゼロでお願いします。