この度、名刺のデザインを一新しました。
想定していた以上に良いものができたので、それに相応しい名刺ケースが欲しくなり・・・。
今回新しくなった名刺の種類。
基本フォーマットに沿ったスタンダードなデザインと、ビジュアルが1枚ずつ異なる遊び心満載な名刺です。
担当デザイナー曰く、複数のお客様と名刺交換を行った際、「少しでも会話の糸口になれば」との願いを込めたデザインだそうです。
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「せっかく良い名刺をデザインしても、それを収納するケースがカッコ良くなければ意味がない!」
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今まで使っていたアルミの名刺ケース(無印○品)では「オリジナル性という観点で釣り合わない」と感じたため、入れ物の方も新たに制作することとなりました。
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ということで、気持ちが冷める前に行動に移ります。
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頭に思い描いた図面を書き出して厚紙にプリントアウト。
形状は「レター型」コンセプトは「シンプルだけども使いやすい」に決定。
実際にモックアップ(サンプル)を作成して使用感を検証します。
細かい箇所を調整して型紙を作成。
ケースの素材は “サドルレザー”というコシがあり、少々固めな革を使用。
型紙を置いて慎重にカッティング。
裏地が毛羽立っているため「トコノール」と呼ばれるコーティング剤をまんべんなく塗り、半乾きの状態で専用の磨き棒を用いてグリグリ磨きます。
※後々、糊で接着する部分はマスキングテープで保護しています。
磨き作業が完了しました。
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続いて「豆鉋(マメカンナ)」という小さな鉋を使用して端っこのエッジを削っていきます。
角が取れ、丸みをおびた箇所にトコノールを塗って磨いていきます。
作業開始から30分ほどでパーツの下準備が完了しました。
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革の接着は「ゴム糊」と呼ばれるレザークラフト専用の糊で貼り合わせます。
「ステッチングルーバー」(写真の道具)で縫い糸が収まる溝を彫って、
「菱目打ち」(フォークのような道具)を木槌で打ち付け、糸で縫い付けていく穴を開けます。
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縫い糸を蝋の塊でしごいて“糸の毛羽立ち”を防ぐ処理(蝋引き)を施します。
「レーシングポニー」(糸を縫いやすくするため、作品を挟んで固定する道具)を用いて縫製。
再びゴム糊を使用して貼り付け。
そしてサイド部分をひたすら無心で縫います。
ゴム糊で(略)
とりあえず「名刺ケース」っぽい形になってきました。
革と革が重なり合って段差が付いた箇所 に豆鉋をあてて削り、
合わせ面が平になったところでトコノールを塗り込み、
「磨き棒を使って光沢が出るまで磨く」をひたすら繰り返します。
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トコノールが乾いたところで仕上げの作業に移ります。
「鉄製のヘラ」をアルコールランプにて熱して、
「蜜蝋(みつろう)」と呼ばれる蜂蜜の入った蝋を溶かしながらヘラに付け、トコノールで磨き光沢をだした部分に押し当てて革に馴染ませます。
蜜蝋が冷めて固まるとこんな感じになります。
蝋で固める省いても仕上がりに問題ありませんが、トコノール処理と比べると堅牢度が格段に変わるため、余裕のあるときや大切な作品にはどうしても施しておきたい行程です。
その後、「磨き棒」や「乾燥ヘチマ」「帆布」を駆使して延々と磨いていきます。
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「ラナパー」(レザー専用の保護オイル)をケース全体(主に表面)に薄く均等に塗りこんでいきます。
オイルを塗った直後は色がびっくりするほど変色しますが数時間で元に戻ります。(とはいえ薄い色の革だと若干濃くなってしまいます)
塗ると塗らないとでは“手に取ったときに感じるしっとり感” に雲泥の差が出てくるため、是非行っておきたい行程です。
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オイルが完全に乾けば完成です。
コンセプトモデルで制作した厚紙Verとの対比。
そして完成!
名刺の収まり具合も丁度良いサイズ感で一安心。
「早くこれを使って名刺交換がしたい!」
と本末転倒な衝動に駆られます。
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【 後 日 談 】
あれから何度か使って行くうちに問題点や修正箇所が見つかり、結局3つの名刺ケースを作成することに。(向かって左側が最新モデル)
革の厚みや色、糸の種類を変更。刻印も追加、制作工程も見直して、ようやく作品となりました。
新しい名刺との相性も抜群です。(名刺のデザインをきっかけに商談での会話も弾みました)
(´-`).oO( さすがに「ケースまで自作」とは誰も気付いて貰えない・・・)
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作成に至るまでのエピソード含めて思い入れも強いので、永く使っていきたい相棒です。
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【 さ ら に 後 日 談 】
お客様からのご依頼を頂き「シガレットケース」を制作しました。
とある商談時に
「それ、作ったの?」
とツッコまれ、それから数十分に渡って制作話に花が咲きました。
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「このケースの雰囲気で、シガレットケースを作って欲しい」
とお話を頂き、普段からお世話になっている方だったので迷うことなく快諾。
数日後、完成した作品をお客様の元へ伺い手渡します。
さっそくタバコを装填して胸ポケットに収め、満面の笑みで応えて頂けました。
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名刺のデザイン変更からここまでの展開になろうとは。
誰にも予想できない生産的な流れ・・・「アリ」ですね!
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