時計の金属ベルトを繋いでいるピンが折れてしまいました。
いつものように気合いのみで修理といった流れで解決するハズが思わぬ展開に・・・。
※今回の修理方法はとても人様にオススメできるものではありませんので、決して真似をしないでください。
時計のベルトが壊れちゃったよ。
仕事中キーボードを叩きながら勢いよく「ターンッ」とEnterキーを押そうとした瞬間、「シャララッ」と崩れるように時計が落ちていきました。
モノが履き物ならば「靴紐や鼻緒が切れた」に匹敵する身の危険を警告する系のイベントなのでしょうが、今まで何度か経験してきた出来事だったため、
「あ、またか」
程度のリアクションで落ち着いていました。
確認すれば案の定、ベルトを繋ぐための「ピン」が抜けてしまったようです。
特に焦ることもなく、代用の「割ピン」を道具箱から取り出し、手慣れた手つきで修理する環境を整えていきます。
【CITIZEN ATTESA】
過去の記事で何度も登場している時計です。
本体に使用されている金属部分は「チタン製」で非常に軽く、硬度もハンパ無く高いため10年以上経過した今となっても目立った傷なく動き続けています。
時計を購入した当初はベルトと同じ材質の「チタン製のピン」が入っていたようですが、ベルトの抜け落ちを初めて経験した際にどこかへ紛失してしまった模様。
それから「真鍮芯」「ピアノ線」と、様々な金属線を検証した結果、ステンレス製の「割ピン」に辿り着きました。
※ 写真は新品のものです
使用して半年ほどで落下。
形状のわりに抜けるもんなんだな・・・と少々驚きもしましたが、ベルトにはいろいろと負担を掛ける事ばかり行っているため これはこれで仕方ない結果なのかもしれません。
気を取り直して作業を開始したもの束の間、どうも様子が違うことに気付きました。
抜けたんじゃない。
様子がおかしいと気付いたのはピンを奥まで押し込もうとした瞬間。
(´-`).oO(これ・・・ 折れてるよね?)
今回の件はピンが「抜けた」ではなく「折れた」ようです。
目視できるレベルで「折れたピンの根本に当たる部分」が穴に残されてしまいました。
すみずみまで確認してみると、割ピンのカケラがガッツリと詰まった状態で穴を守護しています。
これは・・・ 真面目に困った。
真鍮やピアノ線ならば、夏の汗による錆の誘発 → 金属疲労 と起こして折れることは容易に想像できますが・・・
いやいや、コレってステンレスだよね?
と、まさかの事態に焦りながら、ある記憶が頭をよぎります。
洗浄する度に何回か確認できた「錆」↑
洗う度に必ず付着していることから「怪しいな・・・」と思ってはいましたが、ピンの素材が錆に強いステンレス製だということから特に警戒することなく今日まで放置してきました。
それがまさかこんなことになろうとは・・・
思いつく限り、最善の措置を。
詳細を把握するため、手始めにベルトを分解。
最悪のケースを考えて「ベルトの代用品」の購入も視野に入れ製造元に聞いてみた結果、ベルトのみを入手することはほぼ不可能ということを知らされました。
大人しく時計修理専門店の扉を叩けば良いものを、なんとか自力で解決したい欲のせいでなかなかその気になれません。
とりあえず今は目先の修理に専念するのみ・・・
とりあえず「手動のピンバイス」をグリグリ当ててみました。
当然の如く、金属片は “微塵も” 取れる気配はありません。
続いて用意したのは「1mm径のドリル」と「精密ドリルチャック」。
「人力がダメならば機械に頼れば良いじゃない」
と、文明の利器にすがる方向にシフト。
困った時の電動工具
ボール盤にとりつけ、クリアランスギリギリの穴に狙いを定めて慎重に降ろして行きます。
」
先端の微々たるブレが恐ろしい・・・
相手がステンレスとはいえドリルの回転力は凄まじいものがあり、数秒にして目詰まりしていた箇所が本来の形(穴)を取り戻していきます。
砕けて散らばった錆 ↑
なんとも憎らしい・・・
粉状に粉砕された金属片は錆そのものでした。
使用していた割ピンは錆びに強い「ステンレス製」 ・・・だったはず。
海外製のメーカー品のため、他の金属が混ざっていたのでしょうか?
今回の件で懐疑心たっぷりとなってしまったため、余ったピンは全て処分することとなりました。
穴の中に残った鉄粉を丁寧に除去した上でしっかりと洗浄 。
錆びない材質を模索
夏場において汗の量を考えると細い質量のピンでは、いくらステンレスとはいえ錆びてしまうのでは?
と考えた上で「チタン製のピン」もしくは「チタン製の棒」を探してみましたが、丁度良いものが市場では見つかりません。
そんな経緯で選択したのが「ステンレス製の平行ピン」
国内生産製品の工業用パーツため、純然たるステンレス+錆への耐性があるのでは? と期待を込めて購入 ( ※モノタ○ウにて¥299 )
貫通したばかりの穴に通して様子を確認。
今まで使ってきたどの代理品(真鍮、ピアノ線)よりしっかりとしています。
抜け落ち防止のために瞬間接着剤を少量垂らして蓋をします。
接着剤が完全に硬化すれば完成。
とりあえず修理完了?
適切な修理+剛性のある素材の選定を行うまでに2週間ほどかかりました。
久しぶりに時計を腕に巻き、懐かしい感覚でベルトを固定
固定・・・
あれ!? 固定できねぇ?
通常ならば軽い力で「パチンッ」と固定されるジョイント部分が「元からそんな構造でななかったレベル」で収まりません!
何度やっても、どんな角度で試しても結果は同じ・・・
「時計のベルトが外れたのは、この展開を暗示するフラグだったに違いねえ!」
ネガティブ100%の後ろ向きな気持ちを抱えたまま辺りをのたうち回り、冷静になったところで検証に入りました。
「ここからが本当の地獄だった」後編に続きます。