手間の掛かるプラスチック染め
過去に行った「樹脂用染料SDN」を使用してのプラスチックの染色実験。
着色後「元からこんな色だった 」と思えるほど自然な染まり具合に大満足な結果となりました。
塗装と異なりプラスチック自体を染めているためムラの無い着色が可能。
プラの内部まで色が染みているので少々擦っても色が禿げる気配はありません。
(※浸食度は0.3mm程なので削れば地の色が出てしまいます)
透明なプラスチックに色を付ける時は躊躇することなく「染める」行程を選びますが、何度か作業を行っていくうちにちょっとした不満が浮上・・・
それは、
「染色作業までの準備がとても面倒くさい 」
ということ。
基本的に使用する道具が多いため、下準備 & 後片付けに時間が掛かります。
「サッと準備して、カジュアルに染めて、チャッチャと後片付け」
無意識に出たキャッチコピーを呟きながら作業の簡略化をいろいろと模索してみました。
簡略化の救世主「ビーカー」
いろいろ検証した結果、「ビーカー」を導入することで問題がほぼ解決できることが判明。
↓ ↓ 購入したビーカーがコレ。(オススメです)
HARIO (ハリオ) ビーカー 500ml H32 B-500-H32
【メリット 1 】 丁度良いサイズ感と耐熱性
個人的に「500ml」の大きさがベストだと思いました。
SDNの原液を希釈しても染色が2回ほどできる容量です。
耐熱ガラスなので 120℃の高温まで使用可能。
染色作業では基本的に沸騰させることは無いため安心して使用できます。
【メリット 2 】 「湯せん」が可能
耐熱性であることから鍋を使用した「湯せん」が可能。
鍋底からの高熱をビーカーが緩和してくれるので、プラスチックが変形するリスクが激的に減りました。
【メリット 3】 中身の確認が容易
透明なので中の様子が鮮明に確認できます。
箸で手探りしながら対象物を取り出す手間が省けるため、クイックな作業が可能となりました。
【メリット 4 】 染料液の保管が簡単
複数のビーカーを用意することで短期間ならば「スタンバイ状態」での保管が可能。
ラップを2重に被せて輪ゴムとマスキングテープを使って封印。 最後に使用した日付を記して冷暗所で保存しています。
「使いたい染料液の封を開ける」→ 「鍋で湯せん」の流れを経験するともう元には戻れません。
※ 完全密封ではないため染料液の蒸発、品質変化の恐れがあるので1ヶ月内の保管に限ります。
【メリット 5 】 保存容器への入れ替えが簡単
ビーカーの種類によりますがフチが「注ぎ口」になっているため、ペットボトル(長期保存用)への入れ替えが簡単です。
以前は「漏斗(じょうご)」を使用して鍋から注いでいましたが、
ビーカーひとつで事足りるので、結果的に準備する道具がひとつ減りました。
今のところメリットしか見あたらないビーカー。
お値段も「800〜1,000円」と手頃なので、一家にひとつは持っておきたいアイテムですね。
続いては、前回のおさらいも兼ねてビーカーを導入した染色手順をご紹介します。
染色前の下準備
まずは染める対象物(プラスチック)を流水でキレイに洗浄。
中性洗剤を使用してしっかり油分を除去しましょう。
その後「水を入れたジップロック」に浸けた状態で封入。
このままの状態で丸1日(24時間)放置します。
こうすることで「染料がプラスチック内に潜り込みやすくなる」らしいのですが、浸け置きを省いても染色結果に大きな違いはありませんでした。
個人的には「おまじない」に近い感覚で行っています。
浸け置きしたプラスチックをビーカーに投入。
耐熱ガラスのビーカーとはいえ、煮えたぎるお湯をいきなり注ぐことに抵抗があります。
安全面を考慮して「30℃」ほどのぬるま湯で満たしました。
その後「SDN」を追加。(今回はオレンジ色を使います)
原液に対して「20倍に薄める」となっていますが、個人的な経験則にて「10倍」の染料液にしました。
素材にもよると思いますが、「ポリカーボネート」に対しては、公式でアナウンスされている希釈量の2倍が適正だと思います。
※個人的見解ですので実際に行う際は自己責任にてお願いします。
思わぬトラブル
いつものように「アルミ鍋」+「ガスバーナー」の組み合わせで温度を上げていきます。
ここで「湯せん」の恩恵が存分に発揮されていました。
「温度計」をセッティングして目標の70℃まで液温を上げていきます。
頃合いを見てプラスチックを投入しようとした瞬間、それは起きました。
「ポチャンッ」
Σ (´-`).oO( んんっ!?)
温度計 in ビーカー ↑↑ / (^o^)\
一瞬の出来事に驚き、沸騰寸前の熱湯に指を突っ込んで回収。
指先の激痛を堪えながら温度計片手にアタフタする光景が大変シュールです。
時間にすればほんの2〜3秒のことでしたが、温度計内部に染料が入り込んでいました。(振っても傾けても液体が抜ける気配はありません)
染料液の向こう側に見える「水洗厳禁」の文字がむなしく揺らめきます。
急いで「シリカゲルを詰めたジップロック」に温度計を放り込み封印。
そのまま数日放置します。
そんな経緯があり温度管理が使えなくなった状態で染色作業を再開。
勘を便りにプラスチックを沈めていきます。
「浸けては取り出し」を繰り返して染まり具合を確認。
「5分」の段階でオレンジ色が全面に定着しました。
「20分」が経過したところで理想の染まり具合に。
あともう少し濃く染まれば理想的・・・
ダメもとで火を止めた状態の染料液につけ込み半日ほど放置してみました。
〜 半 日 (12時間)後〜
「20分後」の状態と比べてもそんなに変わらない結果となりました。
(背景が異なるので浸け置き後が濃く見えます)
濃度についてはこれが限界と判断して作業は終了。
毎度の事ながら指はしっかりと着色されていました。
(2日ほど取れません)
使い終えたビーカーを放置して自然に冷まします。(※ 急激に冷やすとガラスが割れるため注意!)
ホコリが入らないようにラップを被せていましたが、水蒸気が大量に付着してきました。
水滴がオレンジ色・・・。
周囲に飛び散らないよう慎重にラップを取り替えます。
ラップに水蒸気が付いていない状態を確認して ビーカーのまま「短期保存」か、
ペットボトルに入れ替えて「長期保存」のどちらかを選択して保管します。
〜 温度計その後 〜
早急な対処が幸いして内部の水分はすべて除去、加えて温度計の機能も無事復活!
(さすがジップロック! そこにシビれるあk(略))
代償としてガラスの向こう側が薄い黄色に染まりました。
(´д`;) ・・・
熱源を「HI」に変えてみた
「ビーカー」の導入により染色作業が大幅に楽になりました。
さらなる効率化のために参戦したアイテムがコレ↓
「HI」と「ステンレス製の鍋(HI対応)」
以前までは熱源に「ガスバーナー」を使用していました。
↑ 鍋を煮込む様が非常にクールでお気に入りだったのですが、
・準備に少し時間が掛かる
・細かい温度調整が苦手
・長時間の煮込みはコスパが悪い
と、度重なるデメリットが無視できなくなったので「HI」に鞍替えしました。
そんな「HI」を使用した染色実験。
使用する染料は「ピンク色」。
濃度は公式の倍にあたる「10倍希釈」でGO !
調整した染料液を「耐熱ビーカー」に流し込みます。
(´-`).oO( ファンタ感がすげぇ・・・)
「HI」、「ビーカー」、「湯せん」
上記3点の改善にて激的に作業効率が向上した染色作業。
そして今回新たに購入した「温度計」 ↓ ↓
「水没の悪夢」を糧にクリップが付いたモデルを選択しました。
温度計をビーカーのフチにセッティングして実験を開始!
なんとなくガラスが破損しそうなイメージがあったので時間をかけて少しずつ温度を上げていきます。
それから数分後・・・
温度計が吹っ飛びました\(^o^)/
突然の出来事に驚きつつも「またかよ!」と突っ込まざるを得ません。
美しい放物線を描きながら「ポーン」っと飛んでいきました。
吹っ飛んだ理由はコレ↓
HIから発生する電磁波が鍋底を介してビーカーを細かく揺らしています。
鍋の金属とガラスが擦れ合いパキンパキンッと音を鳴らしており、正直ビーカーが破損するんじゃないかと内心ヒヤヒヤでした。
その後、クリップを奥まで差し込むことで吹っ飛び問題は解決。
気を取り直して染色作業を再開します。
前回(オレンジ色)と同様、20分でキレイに染まりました。
ここからあと1.5倍ほど濃く染まればパーフェクトなんですが・・・
ダメもとで熱源を切り半日ほど浸け置き。
「どうせ濃くはならないでしょ?」と期待せず放置しておきました。
〜 半 日 (12時間)後〜
Σ(;´Д`) おぉんッ?!
良い意味で予想が裏切られ、後悔するほど濃く仕上がってます。
「青色」も「オレンジ色」も「浸け置き」では染色濃度が増すことはありませんでした。
SDNの「ピンク色」はプラスチックに対して浸透しやすい色味なのでしょうか?
少しワクワクしてしまったので、次回はいろいろな素材を染めてみたいと思います。